卵を焼くために、わたしは生きているのだ

今より先に、失望も絶望もない。

100

「100万円手に入ったらどうする? だって」
 
「どうもこうもないだろう。まずは入手経路を塞いで犯行当日の証拠を」
 
「おい。何の話だ」
 
「あ、そっか。先走った。妻との協議離婚進まない前提だった」
 
「ひとまず前提なくそう。あんたは平和な家庭を築いている」
 
「うん。息子が六歳でかわいいかわいい」
 
「たかが100万で急激に奥さんと仲違いはしないよ」
 
タヒチに旅行とか、夢だよなあ」
 
「いいよねえ。遠浅の海」
 
「押し寄せる難民」
 
「窓のない開放的なコテージに、レストラン」
 
「保護のない難民たちの生活。雨ざらしの平屋」
 
「熱帯魚の色とりどりの海。裸足で過ごすリゾートの安寧」
 
「血脈が混在する街、靴すら買えないスラムの」
 
「いちいち言い換えるな。何の真似だ」
 
「話は変わるけど、あぶく銭は残らないっていうじゃない」
 
「いうね。急に100万手に入ったところで、そんなものは人生を狂わせるからとにかく散財しちゃえってさ」
 
「ね、例えばキャバクラでパーッと。競馬でもいいよね。積み立て年金基金にって手もあるけど」
 
「それは堅実になっちゃってる」
 
「生きたぶーんだけ保険料が変わるならいいのにね」
 
「だね。なにも否定しないよ」
 
「食べたぶーんだけ食費が」
 
ソニー損保突っ込んでくるな」
 
「しかしさ、100万円って、設定が案外曖昧だぜ?」
 
「たしかに。今更大金とはいえないし、かといってスルーできるものではもちろんない」
 
「そうなんだよ。つまり女優でいえば黒木華
 
「よくからない」
 
「さして美しくもなく不細工でもない」
 
「それ撤回だ」
 
「じゃあグフだ」
 
モビルスーツくるか」
 
「ドムほどでない、けれどザクとは違う」
 
「まるでわからないや」
 
「だってさ、鞭である必要ないじゃんって、思わなかった?」
 
「それを言ったらギャンの存在価値のほうがわからないって。なんでシールドからミサイルが出るんだよ。本末転倒じゃんかよ」
 
「守りつつ攻撃に転じるとかそういう」
 
「誤作動起こすに決まってんじゃん」
 
「ていうか熱くなるな。ガンダムはどうでもいいから」
 
「100万で買える究極の贅沢ってなんだろうな」
 
「牛肉とか?」
 
「庶民だなあ。どうせ松阪牛とかだろう? すき焼きやって、家族みんな笑顔で寿司三ざんまい! みたいな」
 
「後半よくわからないや。おっさんの映像だけ浮かぶけど」
 
「しかしさ、ポケモンGOやってる?」
 
「100万円の話、逸れてるよね」
 
ラムダッシュよりフィリップス?」
 
「剃れるかどうかの話じゃないんだ」
 
「ついつい排他的経済水域越えちゃったなんて事件が起こりうるよね」
 
「そこまでじゃないと思う」
 
「わしらが子どものころなんて考えられないゲームだよな」
 
「わしらっていう言葉には共感できないけど、まあそうかもね」
 
「だって、ゲームなのに歩きまくって健康になるんだよ?」
 
「そうだよね。不思議。オリエンテーリングの発想だよね」
 
「おじいちゃんおばあちゃんもやってるらしいんだよ」
 
「いいじゃない。健康的で」
 
「もうさ、それは徘徊ですか? ポケモンですかって」
 
「それは大変だ」
 
「公園でヘルパーゲットとかさ」
 
「ウィスパーみたいにいうけど、もうポケモンでもない」