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卵を焼くために、わたしは生きているのだ

今より先に、失望も絶望もない。

五月病

月は笑ったことがない


「医者の診断によると五月病だってさ」

「へー。正式な診断でそんなことあるんだ」

「まったく意欲がでなくて困るよ」

「なんせ七月にその病名くることに驚いたさ」

「気力メーターがゼロ。ゼロリアンでタイムスリップ的な感じ」

「うん。わからない。でもまあ無気力かあ。そういう時期ってあるよね」

「もうさ、呼吸するのも億劫で」

「そこまでなの? かなり重症じゃない」

「こうして話しているのもすごく苦痛」

「まあなんというか、ちょっとショック」

「おまえを見るというか、視界に捕らえるのすら苦痛」

「グサグサくること言わないでよ」

「おまえは元気でいいよなあ」

「そんなことないよ。普通だよ普通」

「だって三食食べてるでしょう?」

「まあねえ」

「俺なんて二食がせいぜいだもん」

「まあほら、朝ご飯食べない人も多いからさ」

「お風呂も入ってシャンプーにトリートメントでしょう?」

「まあそうだけどさ、それ普通じゃない?」

「いやいや、俺なんてさすがにシャンプーまでだもん」

「もうちょっとなのにね。惜しいね」

「外出だってさ、靴は右足までだもの」

「そっかー。バランスが悪いよね」

「鍋とか食べるんでしょう?」

「食べるけどさ、普通だよ」

「しめが最高とか言って雑炊するんでしょう?」

「まあね」

「俺なんかしめまで食べる意欲ないもんね」

「そっか。それも惜しいよね」

「カキが縮まないうちにねーなんて以前にもうアップギブ」

「カキは食べないと損だねえ」

「そろそろ火が通ったかなあ、のところでアップギブ」

「始まったばかりじゃん。しかもなんだよアップギブって」

「本も上巻が精いっぱい」

「そっかあ。1Q84だったら三巻目は読まなくて正解だと思うけどさ」

「映画なんかも観れるんでしょう?」

「まあたまにはね」

「俺なんか一時間しか持たないからさ、犯人とか毎回分からないもん」

「後半の一時間だけ見ればいいじゃない」

「そっか! その手があったねえ」

「仕事なんかは支障ないわけ?」

「大アリクイだよ。一日中ぼーっとしてる」

「アリクイの意味分かんないけどね」

「あ、飼育員やっているときもあるからさ」

「そっか。分かりにくい話しないでしょ」

「もうね。コアラーって怒られるよ」

「うん。ダジャレばかりでついていけない」

「キリンっとしろーなんてさ、上官が」

「いいよもう」

「いい加減にシマウマーなんてさ」

「そこはシロクマで言ってほしかった」

「交通量調査のときはいいんだけどさ」

「ぼーっとしててもね。バレないもんね」

「交通整理のときはもうたいへん。どっかんどっかん」

「危ないでしょう。駄目だよ引き締めていかなきゃ」

「着替えも億劫でさあ。上半身までがやっと」

「そっか。それで今日は下半身パンツ姿なんだ」