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卵を焼くために、わたしは生きているのだ

今より先に、失望も絶望もない。

さよならあの日の、貝たちへ。

日常
わたしは貝類に目がない。誤解のないように付け加えるが、貝類に目がついていないということではない。貝類が好きだという意味である。貝に目があるのかどうか知らないが、今ここでそんなことを論議していても仕方がないと思う。
貝たちをピラミッド形状で考えると、上位カテゴリーつまり貝1(カイワン)に属しているのはアワビ、つぶ貝、牡蠣、ミル貝。でもって貝2はアサリ、さざえ、ハマグリトリ貝、はまぐり、しじみ、平貝、貝3となると、ホタテ、ホッキ貝、青柳となるのだろうか。
歯ごたえのあるものが好きなので、ホタテはどうしても下位にきてしまう。
まあ泣くな。ホタテ。形は好きだぞ。
ちなみにホタテの貝柱の横にあるピンクのビロンとしたやつ。あれはなんなのだ。食べられそうな駄目そうな、食べてもいいがカロリーが高そうなそうでもなさそうな、あのわけの分からないビロンはなんなのだ。不可解すぎる。
話がそれたが、好きな貝のピラミッド構造は理解していただいたと思う。
この中に西洋を代表する貝、そうムール貝が含まれていない。100人中98人くらいの人はどうでもいいと感じているはずだ。
そもそもこの記事自体どうでもいいと感じているはずである。
しかし敢えて理由を述べたいと思う。
体質なのだろうか、ムール貝に100%あたるのである。誤解のないように述べるが、あたるというのはムール貝に衝突するということではない。それくらいなら少し痛いだけだ。そもそもムール貝に衝突する場面を想像できない。降ってくるのか? こないだろう。ならば泳いでいて衝突? 今まで海の中で貝にぶつかったという人に出会ったことがない。
話はそれたが、あたるというのは吐いてしまうということである。誤解のないように添えるが、吐くというのは自白するということではない。そもそもワタクシは警察に連れて行かれるようなことはしていない。ムール貝を食べて連行されるのであれば、イトーヨーカドーアンパンマンショーを見に行っただけで強制連行されるであろう。
このあたる率が100%なのでである。ムール貝のパン粉焼きみたいなもので、最初にあたった。もう朝まで吐きに吐いた。人生で初めて舌がつった。舌をつったことのある人なら分かると思うが、どの部位をつるよりも舌が一番痛いと断言できる。
貝好きが貝を食べられないというのは、家にトイレがないようなものである。
実にうまく例えられていないが、要するに暮らしていけないということである。
当然わたしはリベンジした。牡蠣だって偶発的にあたることがあるのではないだろうか。
しかしパエリアでもあたった。見事にあたった。添え物のひとつでしかないふたつぶのムール貝に、またしても裏切られたのだ。
その夜も吐きに吐いた。また舌をつった。だいたいつるってなんなのだ。ぶつけて痛いならわかるが、吐いて苦しんでいる最中に舌がつるとはどういうことなのだ。盆と正月と七夕と恵方巻きが一緒に来たようなものか? 人体はなぜかくも残酷にできているのだ。
話がそれた。
何の話だったか。
ゆで卵だと思って割ったら生卵だったこと以上に悔しいことがこの世にあるか、という話だったか。
ツレがバリ島のレストランで「しめて」って言いながら指をバッテンにして、こいつは真性の阿呆だと驚愕した話だったか。
ワケあり桃太郎トマトなんてのが売られていたら、ひょっとして鬼が島で敗北した桃太郎なのかもしれない話だったか。
ムール貝にあたるという話であった。
ならばと再度パエリアを食べた。ムール貝を残して食べてみたのだ。それでもあたった。エキスだけであたった。
なんなのだこのあたりは。宝くじはちっともあたらないくせに、ムール貝は全部あたる。
書店くじすらあたらないのにムール貝にはあたる。
日本人だからまだ良かったが、スペイン人だったらもはや生活できないのではないか。
学校で虐められるだろうし、外食すらできないのではなかろうか。
Su familia se mudo a Japon ということで日本に逃げてくるのだろう。
それ以来、ムール貝はワタクシの食用貝一覧から消えた。
あれは食べるものではないと、今は断言できるのだ。