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卵を焼くために、わたしは生きているのだ

今より先に、失望も絶望もない。

お花見

月は笑ったことがない
「やっぱり桜っていいよね」
 
「そうくる? いきなりオチ言っちゃう?」
 
「別にオチでもなんでもないよ。桜だよ」
 
「あーそっちの桜ね」
 
「他にどんな桜があるんだよ」
 
「いやほら、アップルの新製品の行列の話かと思ったよ」
 
「周り見ろよ。満開じゃんかよ。この状況でアップルとか絶対無いよ」
 
「うっわ。咲きまくりだね。気持ち悪いくらい満開」
 
「綺麗だよ。表現おかしいよ」
 
「綺麗かあ。感性の違いって恐ろしいね」
 
「まあお前自体が恐ろしいけどね。それにしてもお花見ってやはり日本の醍醐味だよね」
 
「日本の醍醐味は大相撲でしょう」
 
「まあそれでもいいけどさ、お花見は良いよねって話」
 
「いいよねえ。飲んで歌って回ったり回されたり」
 
「一部よく分らないけど、まあいいや」
 
「そうだ、桜の思い出とか聞かせてよ」
 
「え? うーんなんだろう」
 
「卒業式とかさ、あるじゃんそういうの」
 
「卒業式といったらその頃好きな子がいてさ」
 
「告白したらごめんなさいされたって話?」
 
「う、うん。まあそうなんだけどね」
 
「もっと波乱に満ちた話してよ。ありふれすぎて笑えないよ」
 
「笑える話を求められてるわけ?」
 
「あれは? コンビニでさあ、サラダ温められちゃった話」
 
「あのさ、桜関係なくない? しかもお前全部話しちゃってるじゃん」
 
「じゃあ俺の話を聞いてよ」
 
「うん。最初からその方がいいとは思ってたけど」
 
「子どもの頃なんだけどね、桜の木を切っちゃってさ」
 
「うん」
 
「父親に桜の木を切ったのは誰だって」
 
「待ってよ。それ絶対にワシントンの話と混同してるじゃん」
 
「近藤じゃないよ本橋だよ」
 
「違うよ。苗字の問題じゃないんだよ。ワシントンの話だと言ってるんだよ」
 
「ワシントンってジョージの方?」
 
「他のワシントン知らないけど、そうだよ。ジョージだよ」
 
「へえ、じゃあ俺も大統領なれるのかなあ」
 
「可能性はゼロではないと思うけどね」
 
「桜って言うとさ、あの歌思い出すよね。なんだっけ、名もない花には名前をつけましょうってやつ」
 
コブクロの歌ね」
 
「題名で桜って言っちゃってるのにね。名もなくないじゃんね」
 
「まあそうだけどね」
 
「小説もあったよね。桜の木の下にはなんだっけ、檸檬が埋まってるんだっけ」
 
「惜しいよ。梶井基次郎つながりだけど惜しいよ」
 
「あれ、檸檬の爆弾で桜をどかんと、そういう想像する話じゃなかったっけ」
 
「お前さ、絶対にわざと間違えてるよね」