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卵を焼くために、わたしは生きているのだ

今より先に、失望も絶望もない。

弁当箱に衣装

「満開だね」

「そうね。咲いては散り、咲いては散りを繰り返す桜という樹木」

「うん。少し否定的?」

「ううん。大好き。今日はね、お弁当作ってきたよ」

「あれ、きみって料理得意だったっけ」

「ろんもち。光子の魂100までっていうじゃない」

「おい。それが森だったらかなり危険な発言だぞ」

「まあまあ、ここで与野党みたいな不毛戦はやめましょうよ」

「ちょっと違うけど、まあやめることは賛成かな」

「でねでね。徹夜ってほどじゃないけど、八時間睡眠でお弁当作ったの」

「ありがとう。普通に眠ったんだ。それにしても何を背負ってるわけ?」

「言ったじゃない。お弁当。十字架とでもお思い?」

「それって衣装ケースだよね」

「うん。入りきらなくてさー」

「そ、そっか。お弁当箱が衣装ケースだなんてシュールだなあ」

「早速食べようよ。アリバイ工作とかはあとにしてさ」

「いや、アリバイ云々は関係ないよ」

「えー絶対に聞かれるよ。刑事ってしつこいから。ちなみに身内の証言はアウトだから。これ鉄板」

「だからさ、やってないし。犯罪とか」

「そっかそっか。ごめんね。ちょっと勘違いしてた」

「大幅な勘違いだと思うけどね。じゃあここにシート敷くね」

「わー現場っぽい。ブルーシートで現場の雰囲気抜群」

「食べる前にそういうこと言わないでよ。なんだよ現場って」

「じゃーん。衣装ケース空きましたー」

「そこはお弁当箱にしておこうよ」

「すごいでしょう。フライとかハンバーグとか」

「この海苔の下ってやっぱりご飯?」

「うん。ろんもち」

「ろんもちって、というかさ。ご飯多すぎでしょ。よく担いでこれたよね」

「さあさあ、言った言わないの話はやめて食べましょう」

「そんな話はしていないけどね」

「これどうぞ。イカリングのフライに見えるけど?」

「ん、違うの? あれ、イカリングだ」

「セーフ。おめでとう。あたりを引いたわね」

「外れとかあるんだ? イヤリングとかやめてよね」

「ぎく」

「ぎくってさ、食用以外のもの入れないでよ」

「あなたって暖簾に腕押しな性格よね」

「そんなことわざでいきなり言われてもねえ」

「これどうぞ。タイのお刺身」

「えー。まさかの生ものなんだ。お弁当に入ってるの初めて見たよ」

「ごめーん。お醤油忘れた」

「いや、もはやそういうことは問題じゃないよ」

「ワサビは持ってきたのにな」

「そっか。なんて返せばいいんだろう」

「ウェットティッシュも忘れちゃった」

「大丈夫だよ。そのくらい」

「変わりにバスタオルならあるんだけど」

「なんかさ、かさばる物ばっかだね」

「さてと、指紋をきちんと拭いてからご馳走様しましょうね」

「だからさ、僕はなにもしてないって」

「あら、わたしから盗んだじゃない」

「恋泥棒とかやめてよね。ベタすぎる」

「いいえ。食い逃げよ」

「お弁当有料だったんだ。払うよ。喜んで払うよ」

「300バーツ」

「ごめん。両替しないと無理だわ」

お題「お花見」