卵を焼くために、わたしは生きているのだ

今より先に、失望も絶望もない。

晩御飯

「あなた今晩なにが食べたい?」

「そうだなあ。和食もいいな。質素な感じで」

「そういう顔だもんね」

「いやね、顔筋で嗜好料理出てこないけどね」

「まあ心がこもっていれば、たとえ生焼けの餃子だって、揚げ忘れた揚げ春巻きだっていいと思わない?」

「思わなくもないけど、それって料理として完結してないけどね」

「で、今晩どうする」

「晩御飯ねえ」

「ぎゃははは」

「な、なんだよ。エクソシストみたいになるなよ」

「いたいいたい。笑いすぎて腸が痛い」

「なんだよいきなり。腸とか」

「だってさーあなたが真面目な顔で晩御飯とか言うんだもん」

「どんな顔して晩御飯て言えばいいんだよ」

「また言った! いたたたた。胃が逆さま。逆さま」

「さっきから表現が分からないよ」

「あはははは。ひーおかし。晩御飯。もう絶対に言わないでよね」

「わかったよ面倒くさい。とにかくハンバーグかな」

「えー。翌日臭いが残るからいや」

「そういう材料使うっけ。まあいいや、じゃあ麻婆豆腐とか?」

「おしい! 一文字だけ合ってる」

「そう? 一文字じゃちっともおしくない気もするけど」

「正解は、ペペロンチーノでしたー」

「そっちのほうが臭う気もするけど。しかも一文字も合ってないし」

「そんなタラレバの話ばかりやめましょう」

「してないし」

「でもあれね。ペペロンチーノだけじゃ野菜不足ね」

「サラダでも作ろうかね」

「不足しているといえば我が家の財政も収入が圧倒的に不足しているのよね」

「うん。グサリと嫌なこと言うね」

「もしかして銀行の隠蔽工作!」

「いやね。きっと僕の給料が安いのだと思う」

「そっかー。そんな単純な話かあ」

「それしかないでしょうに」

「サラダはどんなのがいい? ガテン系? それとももっとフェミニン系?」

「系がよく分からないんだけど」

「もしかしてN700系とか?」

「それって新幹線じゃん。普通のグリーンサラダでいいよ」

「スープも欲しいわね」

「お、なんか晩御飯らしくなってきたね」

「うひひひひ! また言った! 言ってのけた晩御飯!」

「周りの人が見てるから大声で笑うなよ」

「だってその顔で、うはははは晩御飯! よっ大将にひひひひ」

「なにがおかしいのかさっぱり分からない」

「胃が、胃がもたれる。うふふふ」

「なんだよもたれるって」

「すふふふふスープ。どうしようふふふ」

「ミネストローネかなあ」

「あ、それ胃にもたれなくてよさそう」

「そうくるんだ」

お題「朝ごはん」