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卵を焼くために、わたしは生きているのだ

今より先に、失望も絶望もない。

野菜が空から降ってくる。

 わたしの家は子ども一人の三人家族なのだが、調理を担当している。だからヴィーガン食を始めたとしても、わたしが調理するわけだから相方に負担をかけることはなかった。

 基本的に毎日のメニューは同じだ。

 巨大なボウルにサラダを作り、味付けは塩と胡椒、オリーブオイルだ。

 それに味噌汁、雑穀米、それだけだ。味気ないようにも思われるが、そもそもサラダというもの、そこに使われる野菜の種類がとても豊富なのだ。

 野菜、とひとくくりにして生きてきたが、野菜には実に多様な品種がある。大好物のトマトは、夏場になれば一日に9個食べていた。

 レタスにはロメインレタスにリーフレタス、グリーンリーフと様々な種類がある。キャベツにも紫キャベツがあり、玉葱もアーリーレッドという紫のものがある。ブロッコリーにカリフラワー、水菜やベビーリーフ、セロリ、わたしが特に好きな野菜は、トマトのほかにクレソンルッコラで、何軒かのスーパーマーケットを回ると、望む野菜はすべて手に入った。

 チコリなんて食べたこともなかったのに、そのほんのりとした甘みと苦みの虜になった。

 一方で家族向けの食事を用意する。得意なパスタだったり、ハンバーグや餃子、息子が特に好きなのはコロッケや唐揚げだ。

 わたしの食事には匂いが極めて少ない。両方を並べるとよくわかる。

「食べたくならないの?」

 幾度も聞かれた。最初は食べたかった。その欲求を防ぐのではなく、楽しんでしまおうと考えた。

 そこで料理番組などを録画して、よく見るようになった。極上のラーメンやフレンチの名店、デカ盛りグルメなんてものを片っ端から見た。

 栗原はるみさんの料理番組が特に好きで、今でも楽しみにしている。

 美味しい料理の映像を見て楽しむ、ヨーロッパではそういう趣味の人々が多いらしく、「フードポルノ」というのだと知った。

 同じようなことを考える人がいるものだ。

 もしこれからベジタリアンを始めてみたい人がいるならば、食を拒むのではなく、むしろ積極的に美味しいものを見ることで乗り越えられるケースがあることを知ってほしい。